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小津安二郎を知り、考えるための書籍・ウェブサイト

初級(小津作品をほとんど見たことがない方におすすめ)

​『小津安二郎新発見』(松竹株式会社編、講談社、1993年)

小津の映画に出演した俳優の紹介、スタッフらの寄稿、簡単な全作品の紹介と年表で構成されている。300頁を超える内容だが、俳優、撮影現場などの美しい写真が大変多く読みやすい。入門者でも小津安二郎に関する基礎知識を得られる。なお、新発見と題されているが、研究上の新発見を列挙しているわけではなく、小津を新たな見地から発見しようという主旨である。最新の研究や深い論評、撮影の裏話などを知りたい人は本書を手がかりに、他の本も読み進めると良いだろう。

 

『日本映画監督列伝①小津安二郎の謎』(園村昌弘原作、中村真理子作画、小津家監修、小学館、1999年)
小津の生涯が30歳頃から晩年までを中心に漫画で描かれ、小津の足跡を知る助けになる。小津はどんな生涯を送ったのか、どんな監督だったのか、まだよく知らないという人にもお勧めできる。同シリーズでこの後に刊行された黒澤明編は内容に批判が多かったが、こちらは小津家が監修しており、客観的事実に基づき描かれている。監督になるまでがあまり描かれていないことが惜しまれる。

『BRUTUS』2013年12/1号(マガジンハウス、2013年11月)

小津をまだ見たことのない若い読者が気軽に映画を楽しめる工夫がなされている。数値や図で解説される小津に関する基礎知識、蒼井優が語る小津のほか、山田太一が語る小津映画とテレビドラマの比較、写真家ホンマタカシによる撮影の分析など、新しい切り口から小津に迫った内容も掲載。雑誌なのでカラー写真やイラストも多く理解しやすい。本書の掲げる「小津の入り口」としては最適で発見も多数ある。

 

こちらもおすすめ

『小津安二郎』(良品計画、2017年)
「無印良品」の良品計画が刊行。小津の言葉や珍しい随筆を掲載。あまり知られていないものも多く、これらを選んだ編集者の着眼は鋭い。
『考える人』
(新潮社、2007年2月)
小津特集が約50頁にまとめられており入門者に向いている。野田高梧長女である山内玲子への取材など、深い内容も。

中級(作品をいくつか見たことがあり、さらに深く知りたい方におすすめ)

『小津安二郎・人と仕事』(小津安二郎・人と仕事 刊行会編、蛮友社、1972年)

佐藤忠男『小津安二郎の芸術』やドナルド・リチー『小津安二郎の美学』と共に、小津研究の基礎を築いた。没後9年に出版された。ほとんどの小津組の俳優、スタッフらが寄稿、対談しており非常に充実している。712頁二段組みと分量も膨大。小津を語る本の多くに参照されている。年譜には誤りもあるが、小津とその作品を知る上で欠かせない一冊。現在絶版で、非常に高価になっている。

『小津安二郎を読む 古きものの美しい復権』(フィルムアート社編、フィルムアート社、1982年)

200頁を超える全作品解説と100頁にわたる事典が柱となっている。解説に新しい発見は乏しいが、作品を知る上で役立つ。事典では、「酒」「時計」「ポスター」など、小津映画に現れるもの、ことを多数紹介し作品を分析。逆引き事典のようにも使える。これらから小津の映画を改めてみても面白いだろう。

『陽の当たる家 小津安二郎とともに』井上和男、フィルムアート社、1993年)

小津組の俳優やスタッフら38名の回想や証言が300頁にわたって収録されている。同じ編者による『小津安二郎・人と仕事』より取材人数が絞られており読みやすい。小津の妹弟や中学時代の同窓生らが語る小津の人となり、小津代用教員時代の教え子が語る小津など、映画制作以外の話も多い。撮影監督厚田雄春や美術を担当した浜田辰雄ら、スタッフへの取材も大変面白く、もっと読みたいと思われる箇所もある。

『KAWADE夢ムック小津安二郎』(河出書房新社、2001年)

吉田喜重や岡田茉莉子、黒沢清や青山真治の語る小津論、プロデューサーの山内静夫が紹介する小津組の小道具など、小津を様々な角度から多様な論者が語る。よくある特集本に見えるが、他では滅多に読めない脚本『愉しき哉保吉君』が掲載されている。また、『その夜の妻』と『晩春』の原作になった短編小説、小津によるエッセイも採録。入門者にはやや難しい箇所もある。

『小津安二郎 大全』松浦莞二・宮本明子編著、朝日新聞出版、2019年)

小津映画の俳優やスタッフ、国内外の映画監督、音楽家らが小津とその作品を論じる。新発見を多数含む100頁にわたる完全版伝記に加えて、フィルムが現存しない作品を含む全60作品を細部から読み解いた分析など新しい試みが連なる。幼少期の絵画、小津が中国で撮影した写真など、貴重な資料も多い。平明な言葉でまとめられているので読みやすく、体系的に理解できる。惜しまれるのは全出演者への取材がなされていないことか。

こちらもおすすめ

『キネマ旬報』1964年2月増刊号(キネマ旬報社、1964年2月)
小津没後翌年に刊行された。古い雑誌で手に入りづらいが、スタッフや関係者の生々しい証言が90頁にわたって掲載されている。
『絢爛たる影絵』
(高橋治、文藝春秋社、1982年)
『東京物語』の助監督を務めていた高橋治による小津の評伝。興味深い内容がある一方、これは高橋の「作家の真実」だとの指摘もある。あくまで読み物として楽しむべきものか。
『豆腐屋はオカラもつくる――映画監督小津安二郎のこと』
(田中康義、龜鳴屋、2018年)
著者が小津組助監督時代の出来事を振り返る。直接小津を知る著者ならではの記述も多くある。戦後の作品を中心とした回想が中心。


 

上級(全作品を見たことがあり、さらに深く知りたい方におすすめ)

『監督 小津安二郎〈増補決定版〉』蓮實重彥、筑摩書房、1983年)

批評家蓮實重彥の小津論。田中眞澄が資料の編纂や調査から小津研究を進めたのに対し、蓮實は映画を徹底して見ることで、見過ごされがちな小津の映画の特徴を明らかにしている。世間に流布する、小津は日本的、何も起こらない映画だといったイメージの再考を促した。「食べること」「着換えること」など論点は明確だが、文章がやや難解である。

『小津安二郎全発言〈1933~1945〉』田中眞澄編、泰流社、1987年)

1933年から1945年までの小津の発言をまとめている。記者との一問一答、座談会での発言のほか、従軍時の取材も収められている。みずからの作品を振り返った「自作を語る」や、国内外の映画・監督評もある。編者田中の解説によれば、最も数多く語られているのは映画監督の山中貞雄と清水宏ではないかという。こうしたところに小津の関心が窺えて興味深い。ただし、小津はしばしば韜晦や記者を煙に巻く発言もしているので注意も必要である。

『小津安二郎物語』(厚田雄春・蓮實重彥、筑摩書房、1989年)

小津安二郎を支えた撮影監督、厚田雄春への取材記録。厚田が初めて小津作品についた第2作『若人の夢』から遺作『秋刀魚の味』までの、撮影手法や裏話が縦横無尽に語られる。言葉自体難解ではないが、撮影に関する用語や各作品の話題が出るため、これらを知っている必要があるだろう。厚田の発言の中には、50ミリレンズは使っていないなど一部誤りもあるが、小津の撮影に関心のある人は必読。

『小津安二郎戦後語録集成』(田中眞澄編、フィルムアート社、1989年)

『小津安二郎全発言〈1933~1945〉』に続く、1946年から1963年までの記録。関連記事や日誌も対象にしている。映画の演出は必ずしも常識に縛られる必要はないと述べた有名な「映画の文法」も掲載。カラー作品への移行が遅かった小津の認識が窺える「渋いアグファに」など、小津を知る上で見逃せない記録が並ぶ。編者の田中によれば、小津の「活字になった言葉」の、刊行当時「発見し得た限りのすべての記録」である。

『若き日の小津安二郎』(中村博男、キネマ旬報社、2000年)

小津の生誕から、三重県での青春時代までが記されている。他の書籍ではあまり触れられない、小津の監督になるまでの足跡をたどれて貴重である。受験当日に映画館に行っていることなど具体的な記述があり、小津の若い時代に関心がある場合は必読。『全日記小津安二郎』にも掲載されていない、中学時代の日記が引用されている。

こちらもおすすめ

『小津安二郎の芸術』(佐藤忠男、朝日新聞社、1971年)
小津の没後5年目である1968年頃から関係者への調査取材が開始され、時系列に小津の生い立ちと作品が論じられている。批評や研究に関心のある場合は必読。
『小津安二郎に憑かれた男 美術監督・下河原友雄の生と死』
(永井健児、フィルムアート社、1990年)
小津を私淑し『小早川家の秋』などで美術監督を務めた下河原友雄。小津とその下河原について書かれた本で、他の書籍にはない切り口がある。
『キネマ旬報』1994年7月7日号
(キネマ旬報社、1994年7月)
ドキュメンタリー『小津と語る』を踏まえた特集号。1940年版『お茶漬の味』の脚本が掲載されているのは、本書と1940年発行の「映画之友」ぐらいであり、非常に貴重。
『デジタル小津安二郎展――キャメラマン厚田雄春の視』
(坂村健・蓮實重彥編、東京大学総合研究博物館、1998年)
東京大学で開催された「デジタル小津安二郎展」の本。撮影監督厚田雄春の遺族が寄贈した『東京物語』のネガフィルムや、厚田の日記が掲載されている。
『小津安二郎の反映画』
(吉田喜重、岩波書店、1998年)
吉田喜重監督による小津論。吉田は小津組にいたわけではなく、深い交流があった訳ではないと指摘する声もある。しかし、それゆえに冷静に論が進められている。
『望郷の小津安二郎』
(登重樹、皓星社、2017年)
あまり語られてこなかった幼少期や若手時代、終戦までを中心として小津が丹念に描かれている。人生での出来事を作品に結びつけているのにやや強引なところもある。

超上級(研究や批評を書きたいという方に)

『小津安二郎の美学』ドナルド・リチー著、山本喜久男訳、フィルムアート社、1978年)

小津安二郎にも複数回会っていた筆者による書籍。海外で最も知られている小津の書籍の一つ。研究が進んだ今となっては物足りないところもあるが、小津研究の基礎となった1冊。小津作品の脚本や撮影だけでなく編集の分析も行われており、伝記も掲載されている。一方、作品ごとに論を掘り下げているわけではなく、日本の文化について表面的な理解にとどまる箇所もある。

『小津安二郎 映画の詩学』デヴィッド・ボードウェル著、杉山昭夫訳、青土社、2003年)

米国を代表する映画研究者による書籍。全作品のカット数を調査するなど、小津映画を詳細かつ緻密に分析している。内容はかなり難解で娯楽性を追求しているものではないが、映画研究者、批評家は必読の書であろう。

『小津安二郎全集[上]』・『小津安二郎全集[下]』井上和男編、新書館、2003年)

小津の執筆したほぼ全ての脚本を掲載し、解説を付す。掲載されていない作品は、脚本が現存していないものならびに、戦前版の『お茶漬の味』(『キネマ旬報』1994年7月7日号他に掲載あり)、『限りなき前進』(『KAWADE夢ムック 小津安二郎 永遠の映画』に掲載あり)のみ。監督デビュー前に書かれた脚本も掲載。現時点で最も全集と呼ぶにふさわしい脚本集である。解題では出典が明示されていないのが惜しまれるが、小津と作品を知る上で欠かせないエピソードや制作の裏話が並ぶ。

こちらもおすすめ

『聖なる映画――小津 ブレッソン ドライヤー』(ポール・シュレイダー著、山本喜久男訳、フィルムアート社、1981年)
『タクシードライバー』で脚本家として注目を集めた著者の評論。禅思想との関連など、いささか強引な面もみられるが、海外で小津がどう受容されたのかを知る上で参考になる。
『全日記小津安二郎』
(田中眞澄編、フィルムアート社、1993年)
1933年から1963年までの小津の日記が時系列に整理されている。資料として貴重だが、日記のみの掲載であるため、読み物として娯楽性を求める読者には向かない。
全国小津安二郎ネットワーク
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全国の小津愛好者によって運営される。「小津監督を巡る文献・資料」のページでは、1927年の「蒲田週報」以降の情報を確認でき貴重である。

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