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LAアカデミー映画博物館での作品解説 

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2023年9月14日、ロサンゼルスのアカデミー映画博物館で小津の特集上映が組まれ、その解説を担当できることになった。名誉であると同時に不安もあった。米国ではあまり小津の人気がないと聞いていたためだ。

 

会場となった博物館はレンゾ・ピアノによる設計。博物館というものの大型の映画館が併設されており、米国の映画文化の豊かさを物語っていた。同館の第一回展覧会は宮﨑駿展で、日本でも大きく報じられたことも記憶に新しい。当日はジョン・ウォーターズの展覧会でウォーターズ監督も来ていたようだ。もし声をかけていたら彼も上映に来てくれただろうか。

 

事前の打ち合わせで、チケットが完売したと聞く。かなり大きい会場で平日、しかも二本立てなので大変驚く。解説した作品は『小早川家の秋』と『秋刀魚の味』。まずは初歩的な話から始めた。小津というのは小さな浜といった意味だ。安二郎は安らかな次男といった意味だろう。安二郎の生まれた1903年は日露戦争が始まる直前だ。安二郎の両親も、今のウクライナの人たちが願っているように、子に安らかに育ってほしいと願ってそのような名前をつけたのではないか……。満席のお客さんは食い入るように聞いてくれた。若い人もたくさん来てくれたことが嬉しかった。

小津がジョン・フォードを好んでいて、作品に影響があることも少しだけ触れた(小津のフォードからの影響は見逃せないものがある。例えば小津の第一作『懺悔の刃』にはフォードの『豪雨の一夜』からの引用があったという。『小早川家の秋』でも『いとしのクレメンタイン』の歌が歌われる)。

 

もう日本では殆ど機会のないフィルム上映だった。微細なおかしみが生まれる瞬間にも、笑いがたくさん起こった。静か過ぎる日本に対して、全く理想的な環境ではないか。上映後は、夜遅かったのにもかかわらず、観客から熱心な質問も受けた。長らく米国では小津の人気がなかったというが、状況は変わってきているようだ。これから米国での人気はさらに盛り上がるのではないか。上映の企画者にも気に入っていただいたようで、翌日にアカデミーの図書館に行った際、館内に展示されていたオスカー像を「持っていいよ」と手渡された。小津に代わって大切に抱えた。小津作品の魅力はついにこの地にも伝わっていた。もしまたこのように小津の魅力を伝えられる機会があれば、海外でもどこにでも飛んで話をしていきたいと考えている。

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